輪の外にいる私と娘〜友人関係のこと

娘のこと

息子の発達障がい(ASD)に、そうとは知らずに翻弄され始めていた頃

娘が幼稚園の年長さんになるタイミングで私たちは引越しをしました。

娘は輪の中心にいたり活発な方でしたから、新しい環境でもすぐに慣れるだろうと
大して心配はしていませんでした。

それよりも、すでに育てにくさを感じていた2歳下の息子の
幼稚園入園のタイミングに合わせることを優先しました。

とはいえ娘にとっても「小学校入学」という
環境が大きく変化する前に、ご近所にお友達ができたり
環境に慣れる時間になるという思いもありました。

今回は、実際引越した後で見えてきた、息子の陰に隠れて見落としていた

娘の困り事「人間関係」それに気がつくまでのお話をしようと思います。

 

ちょっとずつ“輪の外”にいた

それまで通っていた幼稚園から離れ、新しい土地での新しい園生活が始まった娘

もともと明るくて活発で、誰とでもすぐに仲良くなれるタイプでしたが
引っ越し後、少しずつ様子が変わっていきました。

新しい園には毎日楽しそうに通っていたし、帰ってきても「今日も楽しかったよ」
と笑って話してくれていたので、特に気にしていませんでした。

しかし行事などで園に行った時、私が感じたわずかな違和感

お友達が何人かでわいわい遊んでいる輪の少し外に
ぽつんと立っている娘の姿がありました。
もちろんニコニコしていて、何か困っているようには見えませんでしたが


自分からその輪に入っていこうとする気配もなく、
ただ静かに、

遠くから眺めているだけのように感じられて……。


「あれ? この子、前はもう少し積極的だったはずなのに」と
少し胸がざわついたのを今でも覚えています。

その後小学校に上がると、園で一緒だったお友達は近くにいなかったため
またゼロからの人間関係づくり。

多少心配はあったものの、すぐに仲良しの3人組もできて
「よかった」とホッとしたのもつかの間

やはり行事で学校へ行った時や放課後にその子たちと遊んでいる様子を見たり
話を聞いたりしていると、娘はただ“ついていっているだけ”なのでは……?
と思うような場面が多くなってきました。

 

表面的には「仲良しグループ」

娘も3人組の一人として一緒に行動していたけれど、私は何となく感じていました。
娘はその輪の“中心”にいる子たちに合わせて
相手の話にただうなずき、笑っているだけ。


発言は少なく、自分の気持ちをはっきり言うことは滅多にない。
どこか常に一歩引いたところにいるように見えてしまうのです。


そして、それを「おとなしい性格」や「気を遣える子」なのねと
周囲が好意的に捉えてくれる間はよかったのですが
少しでも関係が不安定になると、真っ先に外されてしまうのは、いつも娘でした。

習い事でも感じる“孤立感”と胸の痛み

娘は幼稚園の入園当初からダンススクールに通っていました。
引越し先でも幼稚園を探すのと同時にダンススクールを探し
すぐに通い始めました。

ダンススクールではもう少し積極的だったように思いますが、
それも年齢が上がるにつれ状況は変化していきました。

 

毎年大きな会場を借りて発表会が行われていたのですが、
発表会の数ヶ月前から、少し離れた練習会場への送迎や
事前準備、リハーサルや当日の裏方など
保護者が子供達のそばにいる機会が多々ありました。

そしてその度に私は

輪の外と言うより、段々とその輪から遠く離れ
私のそばから離れない娘を見ているのが正直とても辛かったのです。

そんな輪に入れずにいる娘に話しかけてくれるママ友もいました。
つまりそのママ友から見ても、
馴染めていない娘が気になって
気遣ってくださったのだと思います。

 

そしてこの違和感が大きな問題に変わる時がきます。

 

ダンス発表会で見せてくれた“本当の笑顔”

娘が5年生の時でした。ずっと通っていたダンススクールで
娘は仲間外れにされました。
体調を崩し一時期お休みをして復帰した時のことです。

それまで一緒にお喋りしてくれていた、クラスメイトだった子が
話しかけても無視するようになったのです。


そして娘から離れて他のグループに加わってしまうため
その子だけが唯一頼りだった娘はひとりになりました。
娘の方を見ながら明らかに陰口を言われたりもしたそうです。

 

そのことを私が知ったのは数週間後でした。

ダンスが終わる時間に車で迎えに行くのですが
いつもお友達とお喋りして待っている娘が
ひとりロビーのソファに座って待っていました。
先週もその前もそうでした。

何かあったのかと聞くと泣きながら

「お友達に話しかけても無視される。
とても辛いから本当は辞めたい。
だけどそれ以上にダンスが好きだから辞めたくない」

と…

 

ずっと人の後ろにいる娘ですが、意外なことに発表会は大好きなのです。
よりセンターに近いポジションに選ばれることを期待して、頑張っていました。

とはいえ、特別ダンスがうまいわけではありません。
1曲でも真ん中、いや中央付近で踊れるパートがあれば良い方で
後ろだったり
端っこになることはよくありました。

やはり上手い子は本当に上手で、ソロパートを任されたりして。
ノーメイクの時に見る、あどけない様子とは一変
子供とは思えないパワーや表情に会場全体が惹きつけられます。

本心では羨ましい気持ちはあったとは思いますが
私に

「Aちゃん格好いいんだよ!
そのプログラム絶対観てね!格好いいから」

と話す様子からは妬む気持ちはなく、純粋に

 

発表会での娘のキラキラとした笑顔は
日々のモヤモヤする気持ちも吹っ飛ぶほど素敵で

あぁ本当にダンスが好きなんだなと

娘が頑張ると言う間は母親として全力で応援したいと思いました。

 

残念ではありましたが、そのダンススクールは6年生の発表会を最後に退会
他の小規模なダンススクールに通うことにしました。

 

不器用な親子の歩みと見えてきたもの

別のダンススクールには仲の良いお友達がいたのですが
結局娘は、そこでもなかなか輪に入ることができませんでした。

中学生になると、今度は学校に通うこと自体が難しくなり
不登校をきっかけにダンスはやめてしまいました。

「もっと何かしてあげられたんじゃないか」
「もっと親として関わるべきだったんじゃないか」

そんな後悔にも似た気持ちが、ふと湧いてくることもあります。

実は私自身、昔から“群れる”のがあまり得意ではありません。

自分らしくいられるお友達がひとりいれば充分だと思っています。
お互い心地よい距離感の友達がいれば
友達100人どころか10人もいらないと思っています。
この考え方は今も変わりありません。

私には、極近しい友人が数人、そして程よい距離の友人たちがいて
人間関係であまり困ったことがありません。

そう思っていました。

 

ですがこうやって自分のことを振り返り、思ったことは


友達づきあいに必要以上に踏み込みすぎないことで
自分を守ってきたのかも知れないということ。

たまに見かける
「子どもの会話を一言一句チェックして、関係性を細かく把握しようとする親」の姿を

「すごいなあ」と思う反面
「そこまでやる必要があるの?」と疑問に感じてしまうこともありました。


けれど今は、

我が子が人間関係でつまづいていると分かっているなら
私こそ、そのような親の姿を見習って
一言一句確認をしてソーシャルスキルトレーニング(SST)
をしてあげれば良かったのかも知れない。と思うのです。

真逆の価値観にも学べることがたくさんある
見方を変え、理解してみようと
この歳になってようやく気づくことが出来ました。

 

私たち親子は、きっと少し不器用で
でも不器用だからこそ、試行錯誤しながら
大切なものに気づいていけるのかもしれません。

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