「てんかん」の通院を卒業したのは娘が19歳のとき。
2歳半から始まった通院は、卒業までに17年かかりました。
恐怖の脳波検査も、待合室の椅子で宿題の漢字ドリルをやらせたのも
今となっては懐かしい思い出です。
振り出しに戻る
最後にけいれんを起こしてから5年間、発作を起こさなければ
毎日朝晩服用している「発作予防薬」を少しずつ減らすことが出来ると言われていました。
薬をやめ、その後の脳波検査で異常が見られなければ完治したことになり
通院と投薬から解放されるのです。
娘が最後にけいれんを起こしたのは小学5年生の時で
その前の発作からあとひと月で5年が経つ、というタイミングでした。
あとひと月…けいれんを起こさずにいたら「てんかん」から卒業だったのに…
原因はインフルエンザによる発熱でした。
通常の風邪とは違い、インフルエンザは高熱を伴うことが多いので
発作の引き金になりやすいからと言われ、ワクチンは毎年接種していました。
ですが流行の季節になると、いくらワクチンを打ったところで
運悪く罹ってしまうことはあります。A型、B型…だの型が違うと効かないらしいとか何とか
ワクチンの意味とは?!と思うのは私だけでしょうか?
ショックでした…でもどうすることもできません。受け入れるしか無いのです。
その頃には通院の間隔も空いていましたし、検査の類もスムーズでしたから
諦めもつきましたが…。5年かぁ…。
ゴール目前にして「振り出しに戻る」
その時からまた、新たに5年の投薬と通院のカウントが始まりました。
「卒業」の見送り
その「5年後」は娘が高校1年の時。
中学2年から不登校だったので、少ない登校日数から通える
通信制高校に進学することを決めていました。
不登校の間は、ほとんど家から出ない生活をしていたのと
ストレスで体重がかなり落ちていたため、体力もありませんでした。
娘の現状を理解してくださっていた主治医からは、5年目を迎える手前の中学3年の夏頃から
「ストレスが原因で発作を起こすこともあるので、精神的に不安定な時期の減薬はおすすめできない
新しい環境に馴染むまで、延長してはどうですか?」
と提案されていました。
そもそも、受験や引越しなど環境が大きく変わる時は精神的ストレスから
長年治っていた発作を再発してしまうことがあるそうで、
そのようなタイミングでの減薬は避けるよう勧めているそうです。
そこに加えて2020年はコロナが流行した年でした。
感染により高熱が出るということで、どんな病気かよくわからない
このタイミングで投薬を止めるのはさらにリスクがあると。
私と娘は、ここまで来てまた「振り出しに戻る」るのは避けたい
という思いから薬の服用を延長する事にしたのです。
待ちに待った卒業
娘はコロナに感染し高熱を出したものの、発作を起こさずに済んだため
すでに記憶が曖昧ですが、確か半年かそれよりも短い期間で薬を減らし中止していきました。
これは私が思っていたよりも早いペースでしたので、とても嬉しかったです。
そして投薬を終了してから、さらに脳波検査で脳波に異常が見られないか
検査をし、問題がないということでやっと!やっとです!「完治!」
2023年晴れて「てんかん」から卒業することが出来ました。
薬を習慣化させることにとても苦労し、怒ったり、喧嘩したりしたのは遠い昔。
飲んだと思っていた薬がカーペットの下に隠してあったこともありました。
泊まりがけで出かけた時に、薬を忘れてきてしまった時の焦り
学校に出す書類や、病院での問診票に必ず「てんかん」について
事細かに書き込まなければならないという煩わしさ。
大きな病院での長い待ち時間。その間の兄弟喧嘩。宿題を病院の長椅子でやらせていたこと。
主治医の先生が2回産休でいなかったこと。
色々な出来事が思い出され長い月日を感じました。
長年診てくださった先生に、心から感謝の気持ちをお伝えしお別れした一方で
意外にも、まるでまた半年後来院するようなそんな軽い気持ちで
最後の診察を終えたのでした。